2項 違法行為

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2人はそびえ立つ校舎の前に立っていた。 ガサゴソとビニール袋を漁る大智。 そこから出してきたのはカラフルなペイントスプレーだった。 「こんな大きなキャンパスに描けるなんて いい世の中になったものだ。」 スプレーで絵を描くスプレーアート。 今までも密かに橋の陸橋の裏や裏路地の廃墟の壁など幾度となく描いてきた。 あきやは絵を描くのが好きだった。 それは幼少期から一人で居ることが多かった事に 起因する。 転校を繰り返して友達も出来ず それでも家庭は裕福というわけではなかった為、 母はパートに出ていた。 ゲームなどは好きに買ってくれていたが、 元々頭を使うものよりアクションやレースのようなもののほうが好きだった為、一人でやっても すぐに飽きてしまった。 だからやることが無くなると マンガを読む事や絵を描くことに没頭した。 マンガやゲームの登場人物や背景などを模写し さらには自分で世界を創造し 特に広がりを見せたのが勇者が魔王を倒す ファンタジーの世界。 話も絵も我流。 ただ相当書き込んだ事であきやの画力は相当上がっていた。 しかし、それを見せる他人も友達も居ないため、 密かにしたためたその能力は 大きくなり、夜ダチとつるむようになってから スプレーアートに出会い、 そこで開花した。 以来、爆発したようにいい場所を見つけては 絵を描いた。 ちなみにスプレーアートは違法。 建造物等損壊罪にあたる。 【建造物等損壊罪】     他人の建物に許可なく落書きやビラなどを     貼ってはいけない。     5年以下の懲役。     罰金刑はなく懲役のみの罪は重さを表す。 損壊しなくても罪になる。 なんとなくそんな事は分かっていた。 ナンバープレートを曲げたり、違法駐車も 住居侵入も。 悪い事だろうことは分かっていた。 分かってやっていた。 スプレーアートだって。だから陸橋の下などを 選んで描いていたのだ。 ちょっと悪い事をしてやろう。 そんな背徳感と、俺の存在をもっと知ってほしい。 そんな自己肯定欲が国や世の中への反逆の気持ちに変わり、 そんなあきやが描く絵は いつしか勇者から悪魔へと変わっていた。 「魔王ってカッコいいよな。」 魔王に憧れた。魔王の絵を描きながらつぶやく。 法律や国をぶっ壊す魔王。 今回、どのような経緯で法律が変わったかは わからないが、 その魔王の所業をした人に感謝した。 今までの自分が正当化されたようで それだけで認められた気がして嬉しかった。 さて・・・次は何をやろうか・・・。 「なぁなぁ大智!次は何をするよ?」
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