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3項 フィーバー
魔王を描くスプレーの手がこれからの楽しみで
踊るようにはかどる。
2人の楽しそうな声だけが響く校舎。
道路の標識をあらぬ方向へ曲げるとか・・・
【往来を妨害する罪】
リア充野郎(ミッキー)を池に落とそうか・・・
【傷害罪】
警察を呼び出して逃げたり、警察署に消火器を
ぶちまけてやろうか・・・。
【偽計業務妨害】
【公務執行妨害】
【威力業務妨害】
考えても、とりあえず浮かぶのはやった経験のある
事だけだった。
ちょっとした抵抗でやっていた事。
今はそれが全て認められる。
国家権力に打ち勝った!
そんな気持ちにさえさせた。
「そういえばあきやがミッキーを急に池に落とした
時はビビッたぜ。『何やってるんだよあきや』
って聞いたら『あいつが絡んできたからよ〜』
って(笑)あいつ絡むの仕事だせ?(笑)
あの時はマジで笑ったわ〜!」
「だってよ〜。何よりあいつ、"私、幸せですよ"
って顔して絡んで来やがるからさ〜。アレが
ムカつくんだって〜。」
「いやいや、アレああいう顔の着ぐるみだから(笑)。中のおっさんはそりゃあ苦労して険しい
顔してっから!(笑)」
思い出に花を咲かせながら描いているアートを完成させていく。
あきやが本日描く"サタン"は
黒を色調に、背中から羽を4枚生やし
その翼を大きく広げ、今にも飛び立ちそうな。
まさに『自由を手に入れた』そんな
気持ちを表したような作品になっていた。
一方、ヒョイヒョイとリズミカルに
盛り上げながら描いていた大智の絵は
ストリートポップ調に
ピンクや緑や水色でカラフルに描いた
英語のロゴのようなものだった。
「チームのロゴ。こんなんどうよ?」
そこに書かれている文字は
"Another Dimension"
あきやと大智が一生懸命考えた
2人の率いるチームの名前だ。
「いい!いいやないか大智!この色彩が斬新で。」
「だろ?やっぱ才能感じちゃうよね〜。」
自分の作品に惚れ惚れする。
「何よりネーミングセンスがいい!」
この名前に決まるまでには色々な名前を経由した。
『最強』。『なんかありがちじゃね?』
『紅蓮』『かっこいいけどよ。意味わからね〜。』
『そっか〜。ならいっそ英語いっとく?』。
『dropout』『なんか飴みてぇ。可愛すぎ』
『underground』『まぁまぁかな』。
『そうか〜ちょっと角度変えて考えてみるか。』
『なら、another dimensionなんてどうよ?』
『それどういう意味?』
「だろ〜!なんか神が降りてきたわ〜。」
大智の博識からポンと生まれたネーミング。
『Another Dimeosion』=『別次元』。
俺たち最強!その強さは次元が違う。
そんな所からあきやはそれに賛同した。
「いや〜惚れ惚れするわ〜。」
大智のPOPなロゴと自分の完成した魔王の絵を見て
感傷に浸るあきや。
こういう達成感に浸りたい時は煙草が
吸いたくなる。
あきやがズボンやベストのポケットを叩いたり
突っ込んだりして漁る。
しかし、煙草の箱の形がどこにも確認出来ない。
「あ!そういえば、、、」
あきやはふと思い出した。
前に煙草を吸った時に最後の1本だった。
その時に明日買えばいいやと思って・・・
買った記憶がない。
ちなみに隣の大智はというと
『吸う必要性を感じないね』と、言って
煙草を吸わない。
あきやにとって煙草を吸えないという事は
腹が減っても飯を食うな!と、
言っていることと同じだ。
そんなの我慢できるはずがない。
あきやは煙草を吸わない大智に対して
遠慮がちに頭をヒョコヒョコと下げながら
ジェスチャーで合言葉でも伝えるように
『煙草を吸いたい』『ちょと付き合って』
『いい?』と、伝える。
大智も自分は必要性を感じないが、
あきやが吸わないとやっていけないのは
十分承知な為、
「なんだ?煙草忘れたのか!?いた仕方無いな。」
と、ここいらの地形に詳しい大智にバイクに
乗せてもらい、一旦、煙草を買うために
出かける事にした。
【未成年者喫煙禁止法】
ニ十歳未満の未成年者の喫煙を禁止し
親権者やその他監督者、販売した者に
罪を科す。
知りながら制止をしなかった親権者は
科料、
知りながら販売をした販売者は
五十万円以下の罰金。
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