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2項 やってみたかった
言い出しっべのあきやだが
いざ銀行の扉を前に
ウジウジ入るのを躊躇う。
言葉で聞くのと実行するのとでは
重みが違う。
考えてみると、初めに事件を起こした武装集団。
彼らも乗り込む時はこんな心境だったのか?
いや、初めにやる位だから
とんでもない憎悪と決心で決行したに違いない。
そう思うと、
彼らの動機、気持ちが気になる。
「なぁ、大智、、、。ちなみに、その武装集団の目的は何だったんだ?」
大智に迷っている弱い気持ちを悟られないように
銀行を覗き込みながら
タイミングを見計らってるんだぞ!という素振り
をみせながら大智に問う。
「ん?」
このタイミングで質問が来るとは思って居なかった大智。
一瞬ためらうも、聞かれれば情報通の口が
黙ってはいられない。
「目的は定かではないんだけど。実際犯人たちは何も要求もないまま捕まっちゃったからさ。ただ犯行後、主犯格の犯人が一言だけ動機を語ってるんだ。」
引き込まれるような大智の語り。
その続きを聞きたくて、ゴクリとつばを飲み
食い入るように言葉を待つ。
大智はあえて少し間をあけ、
期待が高まった絶妙なタイミングで
言葉を放つ。
「、、、やってみたかったから。」
あきやの背筋をゾワゾワ何かが這う。
目の前にいる大智の入ったなんの変哲もないくまもんも
まるで悪どい顔に見えるほど
その言葉は衝撃的だった。
「クレイジーだな、、、。」
やってみたかった。
ただそれだけのイカれた犯行。
そんな大それた事でも好奇心だけでやってしまった。
凄いハートの持ち主だ。
「、、、大智。俺たちはどうだ?」
こんな入口に入る事すら戸惑う自分に
その武装集団のハートが後押しをし、
「クレイジー?」
あきやふなっし~は大智の返しに頷くと、
鼓舞を上げるように高らかに言い放った。
「俺たちはクレイジーだ!行くぞ!大智!」
【強盗罪】
暴行または脅迫を用いて、他人の財物を
強取したり、財産上不法の利益を得たり
他人へ得さしてはいけない。
5年以上の有期懲役。
未遂も罪となる。
扉を勢いよく開ける2人。
銀行の中は静かだった。
それでもATMに3人、椅子に2人、カウンターに3人のお客さん。
それに対して銀行員がカウンターで接客する3人に
奥でパソコンに向かい作業をしているのが
ざっと10人が働いている。
「いらっしゃいませ!」
はっきりとした中に、どこか上品な雰囲気を醸し出した丁寧な挨拶があきや達を迎える。
「、、、、。」
あいさつをした事務方の店員がまずその異変に気付き、状況が理解できず処理落ちしたように言葉を失う。
そう。入口から入店してきたのは
ふなっし~とくまモンの着ぐるみを着た2人。
そんな事はかつて無かった。
しかし、その手に拳銃が握られている事に気付き
ようやく置かれている状況を理解した。
「きゃ〜〜〜!!」
その叫び声に触発されるように
周りも2人組の存在に気付き、パニックに陥る。
そこへあきやがそのパニックをかき消すような
低い大きな声で威嚇するように言い放った。
「動くな!動くと撃つ!」
銃口をまず『静かにしろ』と言わんばかりに
騒がしかった店員へ向け、
呼吸が落ち着いた所で周りが変な行動をしていないかお客を一人一人確認。
そこへ、誰も出入りしないよう扉の鍵を閉めた大智がやってきて言う。
「抵抗しても無駄だからさ。まぁ、まず、スタッフさん全員、変な事しないように立って貰おうかな。」
そんな銀行員を監視しながら
一番近くで接客をしていたカウンターのスタッフへ近づき、
相手のお客を
どけ!というようにどかし、
【軽犯罪法第1条の13】
一言言い放った。
「金を出せ!!」
【軽犯罪法第1条の13】
公共の場所において、多数の人に対して
粗野若しくはは乱暴な言動で、迷惑をかけ
又、配給若しくは演劇、乗り物の切符など
の列に割り込み証票を得るために待ってい
る公衆を妨害してはならない。
一日以上三十日未満の勾留、又は
千円以上一万円以下の罰金。
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