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第1条 日常 1項 くだらねぇ
ダンダンダンダン!
あからさまに大きな音を立てて階段を登る足音。
進む先には"あきや"と書かれた表札の扉がある。
その扉のノブを握り、ノックする事もなく勢い良く開ける。
ぐおぉぉぉ・・・・・・
そんな大きな音でも微動だにせず
ベットに大の字になり、片足を落とし、
ズレて掛かってるか掛かってるかないか位の布団に
大きなイビキを上げ爆睡するあきや。
そんなあきやに眉間にシワを寄せ、怒り心頭の母が
「フン!」と牡牛のように鼻息を荒げ
「ちょっとあんた!いつまで寝てんの!」
思い切り肩を殴るように叩いて起こす。
「ぐおっ?!!!」
いきなりの衝撃でイビキは止まり
ビクッと身体を揺らし、驚いた顔で目覚めたあきやは大きく目を見開きパチクリさせる。
まだ虚ろなあきやの瞳に映し出されたのは
まるで鬼ヶ島にでもいるような母の形相。
「あんた!もう!毎日毎日!!ちゃんと起きれないの!!?」
母は
未だ大の字で呆けているあきやの肩を
急かすようにバン!バン!と
力強く叩く。
「いてっ!いって〜な!クソババア!」
その日頃の鬱憤の募った打撃の痛みから逃れるように
母が立ちはだかるベットの反対側からゴロンと転げ落ち、受け身を取って立ち上がり、
敵対心丸出しに思い切り睨みつけた。
「誰がクソババアよ!!」
立ち上がると母より頭2つ分程高い体躯のあきや。
母も負けじと
もう一度叩いてやるわ!というように
ベット越しに腕を掴みにかかる。
腕を引っ張って体制を落とした所を
髪の毛を鷲掴み、又は頭を思い切り叩く
が母の常套手段だ。
そうはさせるか!と、
ベットを隔てた地の利を生かし掴まれないように躱してみせる。
「フーーーン!」と、顔を真っ赤に赤らめ
鼻息を荒げ、闘牛が角を振り回すように
腕を振り回す母を
闘牛士のようにヒラヒラ躱しながら
口で笑って余裕を利かせる。
その態度に余計に腹を立てるも
これ以上やっても埒があかない。
今回の軍配はあきや。
腹の虫が収まらないまま
「あんた!これ以上遅刻したら承知しないからね!!」
と、捨て台詞を吐き、まるで台風でも来たかのような突如訪れた災害は
勢いよく去って行った。
「ふ〜〜〜っ!」
一仕事終えた、と言わんばかりに
肩をぐるりと回し
登校時間のリミットに近い8時10分という
時計を確認するも、
焦ることなくあきやは準備を始めた。
嫌気がさすほど毎日のように言われた言葉。
『学校へ行きなさい』『何度言ったらわかるの』
それを聞くたび、行く気が失せる。
そもそも、学校というものに興味がない。
脱いだパジャマを放り投げ、
着替える制服はチェーンやバッチが飾られ
ベストはショートに改造されている
模範とは正反対の制服。
これは学校への抵抗と少しでも楽しみたいという
形の現れだろう。
『そんな服で!』
そんな些細な楽しみすら奴らは壊そうとしやがる。
鏡を見ながら丹念にセットをキメる髪型も
横髪をワックスで掻き揚げ、
前髪はスプレーで立たせる。
さらに襟足までと言われると伸ばしたくなる
後ろ髪は軽く背中にまで達し
それは、戦うあきやの戦闘スタイルのようだった。
『そんな髪型!』
余計なお世話だ!
言われる程に反発したくなる。
鏡の中の自分を見るたびにいつも思う。
見た目がこうだから!格好がこうだから!
五月蠅い!!
そう言う大人が一番嫌いだ。
俺の事を知りもしない癖に!
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