第1条 日常  1項 くだらねぇ

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いつものように9時をもうすぐ迎えようという頃に 学校に到着する。 閉められた校門。 当然のようにそれをよじ登って越え、 誰もいなくなった校庭を カバンを肩に担ぎ、堂々と肩で風を切りながら 余裕で登校する。 時間や校則なんてクソ食らえだ! 下駄箱で踵をスリッパのように潰した上履きシューズに履き替え、足を擦るように歩く。 そんなあきやに声をかけてくる者がいる。 「おい!」 その声。 聴くと今日も最悪な一日が始まると実感する声の主。 ホームルームも終わり、もうすぐ1限目が始まろうとしている静かな廊下で出くわしたのが 担任の武内だ。 くそ!今日の1限は英語だったか! 「クソガキが!早く教室に入れ!」 そんな高圧的なドスの効いた声。 こいつの声が聞きたくなくてホームルームを ふけているというのに! 今日は運が悪い。 チッ! わざと聞こえるように大きく舌打ちをし 後ろのドアから教室に入る。 学校だって本当は来たくもない。 ドカっと椅子に深く腰掛け、教科書も開かず 腕を組んで机に両足を乗せ 踏ん反り返るように浅く座り直す。 そんなあきやを周りは見ようともしない。 もちろん気づいてはいる。 意識的に気づいてはいないフリをする。 触らぬ神に、、、というやつだ。 あきやの事を周りは厄介としか思っていない。 世の中はそういうもんだ。 だからあきやも興味がなかった。 この無駄に流暢な武内の英語も、 聞いたらすぐに流れていく。 興味がないだけにあきやには学校にいる時間が 退屈でしかなかった。 ふと見ると、 教室に一つだけ空いた席。 その席を見ると 俺がここに居る意味を考えてしまう。 あいつと変われるものなら変わりたい。 学校でのあきやの唯一楽しみは 屋上で吸う煙草だった。 たまに授業を抜け出しては、 誰もいない屋上で空を見上げながら 一人で煙草を吸う。 まぁ、知っての通り 未成年の煙草は禁止だ。 しかし、 青空の下、煙草を吸う開放感。 この縛られた空間から抜け出した気がした。 あと、日課のように行っていたのが喧嘩。 どこかで喧嘩があると知れば向かった。 喧嘩をしていればムシャクシャが晴れた。 何より共に戦う仲間が居た。 怪我をしても、痣が出来ても、 ここが自分の居場所だと実感出来た。 自分が存在していると確認出来た。
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