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2項 夢
オラ〜〜!!
まるで戦隊モノのザコ敵のように
ワシャワシャ湧いて出る敵の一人の顔面を
思い切りぶん殴る。
ウキ〜〜!
手応てもなく敵は奇声をあげながら宙を舞い飛んでいく。
為す術もなく吹き飛ぶのはソイツらと俺との
格の違いという奴だ。
俺の拳は今まで幾度となく敵をねじ伏せてきた。
ウキキキキ〜!
敵たちが一斉にあきやに覆いかぶさるように
取り囲む。しかしそれも束の間・・・
オラオラオラオラ〜!
あきやがバットを持ち振り回すと
弾けるようにその敵達はあきやの周りから
飛んでいく。
俺は最強だ。
特にバットを持てば敵になるやつはいない。
ウキウキウキウキ〜!
それでも次から次へ湧いて出る猿ども。
知能がないのか、勝てるわけでもないのに
がむしゃらにあきやに立ち向かう。
ドン!
そんなあきやの周りの敵の一人があらぬ方向へ吹き飛ぶ。
あきや!!
そこに現れたのは親友のふみやだ。
ザコ共は俺に任せろ!
お前は頭(かしら)を打て!!
力強くお互い頷くと
ザコを足蹴に俺は奴らのボスの元へと走る。
ふみやはいつも泥臭い所を自ら被ってくれる。
ふみやの強さは本物だ!
俺と戦っても対等だろう。
それでも出しゃばったりしない。
仲間の為に身体を張れる奴なのだ。
最強な俺のバックアップに
そんな仲間達がいる。
だから俺はこいつらの為に暴れられた。
ぐっ!!
一人独壇場のように飛び出た俺の身体が
まるで金縛りのように急に動かなくなる。
調子に乗りすぎだ、お前!
少しそこに張り付いていろ!
そこで構える男は長い髪をツンツン立たせ
真っ赤なつなぎのような服装をしているが
背を曲げ四つ脚のような体勢で
顔には鬼の仮面。
それはまるで大きな蜘蛛。
妖怪のような異形な雰囲気を醸し出す。
やれ!
そいつの指示で現れた
鉄パイプのような武器を持った敵達。
ボコ!ボコ!
無抵抗のあきやを多勢で殴りつける。
アガ!
しかも、その一撃一撃が
まるで雷にでも打たれたように痛く痺れる。
一気に形勢の逆転した状況。
人間技ではない能力と見た目のボスの出現。
動けない身体に
意識を奪われそうになるほどの敵の猛攻。
それでもあきやは怯むことはない。
奴らがしたことはあきやの正義の心に火を点け、
それが強烈な攻撃にも意識を研ぎ澄まさせ
力を呼び起こした。
うおおお!
痺れて動けない身体に力を込め、
地面にバットを思い切り叩きつける。
すると、一時的に痺れた身体は自由を取り戻し
持っているバットをボスに向けて投げつける。
ぐぉっ!?
バットの直撃したボスは思わず能力を解除していまう。
ニッ
動ける事を確認したあきやはニンマリ笑い、
攻撃を繰り広げていた敵の一人を蹴飛ばすと、
鉄パイプを奪い、
一気にその痺れる鉄パイプで他の敵もなぎ倒す。
なぎ倒しながらもザコ共の影からバットの直撃で
未だ悶絶しているボスを視野に入れ、
しゃらくせぇ!
勢いよくザコを吹き飛ばしながら
ボスの方へ駆け出す。
!!
ボスもあきやに気付き身構える。
そんなボスに身じろぎもせず
必殺!と言わんばかりに大きく鉄パイプを
振りかぶる。
その背後の影から一人の男がぬっと現れる。
一人だと思ったかい?
ネズミのような顔のフードを被った男は
そう言うとあきやの背後からナイフで
襲いかかる。
くそ!頭が二人いやがったか!
あきやが気付くもすでに遅く
攻撃体勢に入ってしまっている為に
二人目のボスには対応しきれない。
ザクッ!
ネズミ男の凶刃があきやを襲う。
グッ!
刺された所から血がにじむ。
なに!?
ネズミ男の思惑とは裏腹にそこに居たのは
あきやを守るように間に入ったふみやの姿。
ふみや!!
ふみやの身体から血が滴る。
いいから!!あきや!!やっちまえ!!
意識が散ってしまったあきやを鼓舞し、
目の前の敵へ集中させる。
!!くらいやがれ!!
飛び上がり思い切り鉄パイプを振り上げたあきや。
てめぇも覚悟はできてるだろうな。
ふみやもネズミ男を睨みつける。
オラ!!!
振り下ろした鉄パイプがボスの脳天を直撃。
オラオラオラオラ!!
ふみやも血が滴る拳を奮い立たせ
ネズミ男の身体をひたすら殴りつける。
ぐあっ!!!
互いの攻撃が終わると、
二人のボスは同時に地面に倒れた。
うわぁぁぁ!!
その結果にザコ共はパニックになり
散り散りに逃げ出し
そこにはあきやとふみやだけが残った。
ヒーロー達の勝利。
あきやとふみやは満面の笑みで微笑みあい、
ハイタッチをしようとする。
すると、そのふみやの右の手のひらからは血が流れ落ちる。
ふみや!!
そう。
あきやを庇って入った時、咄嗟に右手を突き出し
ナイフを受け止めた。
おかげで他の外傷もなく、
しかし、その拳で殴り続けたふみやの掌は
赤く腫れ上がってるようにもみえる。
まぁ、これで済んだんだから儲けものだろ。
それでもふみやは屈託なく笑う。
あきやも悲しそうに笑う。
二人はその後仲良く肩を組んで帰路についた。
しかし、
それがふみやの致命傷となり、
その後、ふみやと会える事はなかった・・・
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