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妹の可愛さに心を奪われた結果が今の彼なのだ。突然できた小学生の妹に内心激しく動揺し、ひょっとして自分はロリコンではないかと疑ったりもしたが、性的欲求を感じてはいないので、そうではないことに安心し、それはそれ、これはこれと自分に言い聞かせた。
あくまで純粋に可愛いと思うことだけに留まらせていたが、洗濯物の中に妹の下着を見つけてしまったときは流石に理性を失いかけ、すぐに俺の服と、他の家族の服を一緒に洗うなと苦言を呈した。
何とか気持ちを落ち着かせようとするが、ソファーで眠る妹の寝顔を見た瞬間に、その可愛さにスマホで写真を撮ろうとして、自分の変態さ加減に嫌気が差して自暴自棄になりかけた。
まあ、結局妹の写真は撮った。
スマホの写真フォルダーの奥底には、妹の写真があり、時間が有る時はフォルダーを開けて見てしまっていた。
ちなみに、悠人の初恋の相手は小学校一年生のときの同級生の子であり、その子のことを好きになった理由もやはり見た目だったりするが、悠人も妹に対する想いもそれと似たようなものだと納得させれば、さほど気にすることはなかった。
世間には公言できないが。
学校ではそれなりに友人もいるが、放課後になればすぐに家へ帰ることが当たり前となっていた。
母親と一緒に暮らしていた時は、料理・洗濯・掃除をこなしていく毎日で、特に不満はないが充実しているとは言い難かった。そんな時に出会ったのが妹の存在であり、彼女と出会うまでは感じたことのない幸福感を噛み締めていたのである。
とにかく妹に対してのみ異常に愛情を注ぐことが今の彼の最大の幸福感であるのだ。
悠人がリビングの扉を開ける音にも、もう何度と無く驚かされているはずなのに、まるで慣れたかのように全く無反応で読み続ける。
妹が座る隣りに腰掛けてみるものの、その距離は遠く感じるほどに遠い。
普段から自分の気持を悟られないようにしてきた結果だ。
何か話でもしようかと思ったけれど、特に話題もなく沈黙が流れる
「未歩。何読んでるんだ」
気に留めた様子もなく尋ねてみる。本当は猫なで声ですり寄って訊いてみたいが、気持ち悪いと思われたくないので、そんな態度にした。
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