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笑顔が花のように可愛く見惚れてしまう。いつもは冷めている表情をしていることが多いから尚更だ。
(あれ。未歩って、こんな無邪気な顔をするんだ……)
そんな妹の姿を見たことで、悠人は改めて思い知らされる。やっぱり自分はどんなことがあろうと妹が好きなんだということに。
それから未歩は、悠人の顔の前で手を叩く。
悠人はビックリした顔をしながら意識を取り戻すフリをしていた。
「あれ。俺、何してたんだ」
記憶が無いかのような発言をするが実際はハッキリ覚えていたりする。だけどそれでは意味がないと分かっているから演技を続ける。
自分で作ったホットケーキを見て、未歩が作ったのかと訊くと彼女は首を振って、悠人が作ったと言い、悠人はビックリしてみせた。
自分で演じながら、少し大根役者なところがあるのを自覚していたが、未歩は騙されているようだ。
次にやったのは、腕を伸ばし動かなくなってしまうという催眠術だ。
悠人は真っ直ぐのばした腕が動かなくなったフリをし、慌てたフリをし、未歩に助けを求めた。
こうして兄妹の時間だけが過ぎていく中、夕食時になり、食事の用意をすることになったのだが父親も母親も仕事で帰りが遅くなるという。
ここで、一つ問題が出てきてしまった。
料理をしなければならないからだ。
しかも、今夜の夕飯の献立は何が良いか未歩に訊いてみたところ、オムライスと答えたため、余計に頭を抱える結果となった。
悠人は作り方が分からなかったのだ。
スマホで検索を行っていると、未歩はいつもの感情を表に出さない無表情のまま口を開いた。
未歩は、今度は自分が作ると言い出し台所に向かったので、悠人もついて行った。未歩は普段から母親の手伝いをしているだけあって、手際良く調理を進めていく。
悠人は横で見ているだけだったが、未歩の手際に圧倒されてしまっていた。
「さすが、我が家の天使だ」
そう心の中で呟いた直後、つい本音が悠人の口から零れてしまったのだ。
それに反応したのは妹の方だった。
怒った様に悠人を睨みつけると、無言のままで玉ねぎと鶏肉を炒め始めた。
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