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「おいしい?」
不安げな声で尋ねられてしまい、悠人はフリを悟られないように答える。
「おいしいです」
棒読みだけれど本音を口にした。
未歩の喜ぶ顔が見られるならどんなことでも出来ると思った瞬間だった。
その後で未歩もオムライスを食べ始めたのだが、終始ご機嫌で口元には笑みを浮かべていた。
そんな妹の姿を見つつ、オムライスを食べる。
こんなにも可愛い表情の未歩を見るのは、先程ぶりだろうか。悠人にとっては、まるで夢のような時間だ。
「お兄ちゃん。わたしの料理、もっと食べたい?」
そんな質問をされる。
正直なところ、満腹になってきていてこれ以上は食べられそうにないところまで来てしまっている。だけどここで断るわけにはいかないから、胃袋とは真逆のことを口にした。
もっと食べたいと。
すると未歩は笑顔を弾けさせて何度も小さくうなずいていた。
未歩は炊飯器に残っていたご飯を炒め、ケチャップライスを鼻歌を歌いながら手際よく作り、悠人の前に差し出した。
皿の上に、どんぶりを逆さにしたかのような大盛りケチャップライスだった。
それからしばらくの間、妹の作ったケチャップライスだけを堪能する。
途中、家族に連絡をしていないことに気づいたりもしたが気にしないことにした。今だけは二人の世界なのだ。誰にも邪魔されたくはない。
腹が張ってきたことで、悠人はズボンのベルトを緩めざるを得なかったが、未歩の料理は全部食べ終わっていた。
未歩は満足気な表情をする。
その時、インターホンが鳴った。
誰か来たのだ。
両親は仕事で遅くなると聞いていたため宅配便だろうかと思った。
未歩はスリッパを鳴らして、玄関に向かう。
悠人は取り敢えず、はみ出しそうになるのを口を抑えて我慢した。妹の作ってくれた料理を吐き出すなどできはしない。
ふと、玄関からの気配に不穏なものを感じた。
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