催眠術ごっこ

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 そんな姿を見て、悠人は罪悪感でいっぱいになる。  未歩は泣きながら続けた。  お兄ちゃんができて嬉しかった。  でも、お兄ちゃんは、わたし達のことが嫌いみたいで、いつも避けられているのが辛かった。  だから仲良くなって、本当の家族になりたかった。  お兄ちゃんに甘えたかったけど、自分が近づくと怖い顔をしていたので、自分は気持ちを出さないようにしていたと。  それを聞いて悠人は、自分の不甲斐なさを思い知る。  妹に対して、自分勝手な行動を取っていたことに後悔した。  悠人は未歩を強く抱きしめた。  そして未歩の耳元で囁く。  もう二度と避けたりなんかしない。  俺達は、ずっと一緒だ。  と。  すると、玄関の扉が開く。  父親と母親の二人が、買い物袋を手に、ただいまと言いながら入って来た瞬間だった。 「母さん」  悠人は立ち上がりながら、呼びかける。  その瞬間、両親は硬直した。  二人とも目を見開き、口をあんぐりと開けていた。  両親は、目の前に起きている出来事が信じられないといった感じだった。 「ゆ、悠人。あんた、何してるの……」  母親は買い物袋を落とす。  父親は、持っていた鍵を落とした。  悠人は二人の視線を追って下を見ると、自分のズボンが床まで下がっていた。未歩の料理をたらふく食べたことでベルトを緩めていたためだ。  傍らを見ると、未歩が(ひざまず)いて、顔を覆うようにして泣いている。 「お父さん、お母さん、あたし怖かったよ」  と言う。  それは、訪問セールスの男が怖かったという意味であったのだが、悠人は状況的にヤバいと思った。
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