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白い花が咲く丘で
「ルル見て!花冠ができたよ!」
「おー!いい感じだなエマ!」
羽をパタパタさせながらルルがいう。妖精の彼は、人間の少女が時間をかけて作った白い花の花冠をすごく気に入ったようだ。
少女エマは嬉しそうにルルの頭にのせた。
「くれるのか?ありがとな!」
「いつも仲良くしてくれるお礼よ。私、ルルと出会うまでひとりぼっちだったから」
「僕も仲良くしてくれて嬉しいよ。妖精が見える子って少ないからな。」
2人は顔を見合わせて笑った。
エマはもう少し丘の方へ行って景色を眺めたいと思い、立ち上がって歩く。ピンクのドレスの裾が可愛らしく揺れる。その後ろをルルが飛びながらついてくる。
丘に近づくとエマはそこに男性がいることに気づいた。珍しいと彼女は思った。
エマの家は少し村から外れたところにたっており、この辺りは人がいることもない。そのためエマには友達がいなかったのだ。
白い花が咲き乱れるその草原の丘はそよ風が気持ちよく、エマのお気に入りの場所だった。男性はその丘に座り、大きな白い紙に何かをかきこんでいる。
エマはそーっと近づく。男性は40代ぐらいだろうか。少し目尻にシワができている。エマはお父さんぐらいの年齢かしら、と思う。
その時男性がこちらに気づいた。あっとエマが声をあげる。
男性は「こんにちは」とにっこり微笑む。エマはその笑顔に惹かれて彼に近づいた。
エマは家庭教師が勉強の他に教えてくれる礼儀やマナーのことを思い出し、スカートを少し持ち上げてお辞儀をした。
「こんにちは、エマといいます。7歳です!ここに人がいるなんて珍しいの。どこから来たの?」
「スイートなお嬢さんですね。ミーはキースと申す。40になったばかりなんです。旅をしてるからあちらこちらいっております。どこの生まれかと言われたら、ここからもう少し西の方にある国と答えますね。」
キースと名乗った男性は答える。なんだか少し独特な話し方だ。
「なんだか独特な話し方ね!」
「これがミーなんですよ。ミーの世界は素晴らしいもので、この話し方も自分で考えて気に入っています。もう癖になってしまいましたよ。」
男性は楽しげに話す。
「きみは妖精さんですかね?」
キースはルルの方をみて言った。
「僕がみえるの?驚いたな、妖精見える大人なんて。僕は妖精のルルだよ、よろしくね!」
「よろしくですよ!ミーはたまに妖精さんをみるんですが、こんなに近くでみるのは初めてです。」
3人は楽しくおしゃべりをする。
「何をしているの?」
エマがキースに問う。
「旅先で絵を描いて売っています。つまり画家というわけです。今はこの花を描いていました。」
キースは丘に咲いている花を指さす。白い花が風に吹かれてそよそよとゆれている。
「あ、これね!『ブランカフロロ』っていう名前なの。夜になるとほんのり光ってきれいよ。」
エマのお気に入りの花だ。彼女は、はりきって紹介する。
「『希望の花』ってよばれているわ。草原にいっぱい咲いて、夜は星空みたいになるの。だから私は『大地の星空』ってよんでるの!絵も描いたの。」
「へぇ〜!勉強になります。エマの絵も見てみたいですね。」
キースはメモをとりながら言った。
「明日もここにくる?」
「きますよ。この絵が完成するまでここに!」
「じゃあ明日絵を持ってくるね!」
「楽しみです。」
エマはキースが絵を描く様子を眺めながら、旅はどんな感じなのかしらと考えていた。
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