確かな友情

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その夜… 「あれ?ぺちゃんこになっちゃった…」 エマはオーブンをあけてがっかりした。マカロンを手作りしているのだが、なかなかうまくいかない。 「何してるの?もうすぐ寝る時間でしょ?」 「あ、お母さん!あのね、マカロン作ってるの!」 エマはキッチンに入ってきた母親に出来上がったマカロンをみせた。 「あら平たいわねぇ、これじゃまるでクッキーよ。」 呆れたように母親は言う。 「うまくできないの…明日渡したいのに…」 「あら、友達できたの?良かったじゃない。」 母親はちょっと驚いて言った。 「あ、こっちはひび割れてる…」 エマはうーんとうなる。メイドに教えてもらってメモした紙をまじまじとみつめる。 「…仕方ないわねぇ。」 母親はキッチンを出て行った。そしてエプロン姿で戻ってきた。 「膨らまなかったりひび割れたりするのはメレンゲの泡立てが足りないのよ。」 そう言って彼女はボウルに残っているメレンゲをカシャカシャと泡立て始めた。 「泡立て過ぎもダメなのよ…ほらできた。…エマ、何ぼけーとしているの。」 「ちょっと驚いちゃった…お母さんお菓子作り得意なの?」 「んー昔たくさんお菓子作って友達と食べてたわ。お父さんにもあげてたの。」 「あら、お父さんって甘いもの苦手じゃなかった?」 「そうなの?…そういえばそう言ってたわね…忘れてたくさん甘いお菓子あげちゃったわ、ふふふ…でもちゃんと食べてくれてたわ。」 エマはお菓子作りを教わりながら、久しぶりに母親と楽しい会話をしたのだった。 それから彼女たちはマカロンを完成させた。上手くできたものを3つ、袋につめる。 「お母さんありがとう!」 「いいのよいいのよ、久しぶりに楽しかったし…はぁ腕が疲れちゃった。じゃ早く寝なさいねぇ。」 片付けが終わると母親は大きく伸びをした。彼女はエプロンをはずしながらキッチンを出て行った。 エマは余ったマカロンを棚におさめた。寝る準備をして部屋へと戻る。 ベッド横の机に、袋につめた方のマカロンを置く。渡す相手はもちろんキースだ。明日旅立つキースに渡して、お別れをするのだ。 「明日でキースさんと会うのも最後か…」 エマは寂しく思いながら眠りについた。
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