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『私と恋してくれませんか?』
とうっかり送ってしまったときのこと。
ロッカールームで、原稿をばらまいて八尋に見られたこと。
今となってはすべて、いい思い出だ。
しみじみと思い出に浸っていた衣茉に八尋が、
「お前も食べるか?」
と白くてふかふかしたものを突き出してくる。
はっ、と衣茉は息を止めた。
走馬灯のように駆け巡った記憶の中から、ある言葉が衣茉の脳裏に燦然と蘇る。
衣茉の様子につられ、全員が思い出したのか、みんなで叫んでいた。
「肉市民の肉まんっ!」
顔を見合わせ、笑い出す。
将太と真澄だけがきょとんとし、笑いつづける衣茉たちを見上げていた――。
完
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