僕の天使へこの歌を贈る

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小学2年生の夏休み、遠く離れた田舎にある祖父母の家で行われた母さんの妹の三十三回忌に行った時、大人ばかりで退屈していた幼い僕は1人で家を抜け出した。 「ここ…どこだろう。」 しばらくしてあたりは緑に囲まれ、来た道がどこかわからなくなってしまった。だけどそれよりも僕は目の前にあったグランドピアノに目を奪われた。 近くまで駆け寄ると所々蔦に覆われ、ボロボロになって壊れていた。好奇心から鍵盤を押すが、何かが掠れる音のみで想像していたような音は出なかった。 「あなた…ピアノ弾けるの?」 微かに声のする方を向くと、ピアノのすぐそばにさっきまで誰もいなかったのに同い年か少し年下くらいの小さな女の子が立っていた。 長く伸びた黒い髪にぱっちりとした目、一目惚れとはこのことだったのだろう。 白いワンピースを着て裸足で立っているその子はピアノに触れている僕にそう尋ねた。 「あ、簡単なものなら…」 「そっか!私ね、リリィ‼︎」  リリィ そう言って笑うその子は天使のようで、おとなしそうな見た目とは裏腹にハキハキと元気よく喋る子だった。
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