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「賑わってるね」
「ん? ああ。もうすぐ聖女選定祭だからなぁ」
「! そういえば、昨日も一緒に捕まったひとが言ってたわ。地方から来た聖女候補だって…………何?」
「いや、本当にごっそり記憶がないんだなぁと思って。歩いたら何か思い出したとかさ、ない?」
「残念ながら」
ふるふると首を横に振る。
当初の予定通り、記憶はスッパリなくしたことにしたほうが都合がいい。
直行した冒険者ギルドでは、『照合の石板』と呼ばれる道具に手を当てるだけで、あっさり登録内容が判明した。
ルークの言った通りの名前に年齢。職業はシーフ兼治癒師。冒険者ランクはC。この若さなら妥当なところだろう。
ルークは受付嬢に「固定パーティは?」とも尋ねたが、カウンター向こうの女性は困ったように微笑んだ。
「申し訳ありません。ティナさんが最近達成されたクエストは直近でも半年前。単独での希少薬草の採取です」
「その前に組んでた連中は?」
「つど、クエストに応じて変わっていますね。主な探索域はユガリアではないようですし。その先は何とも……」
力になれなくてごめんなさいね、と、暗に『お引取りを』と匂わされてしまう。
――うん。必要な情報は得られたし、今後もこの体でいる間はふつうに利用したい。
出禁を言い渡されそうな雰囲気に、私はさっさとルークの首根っこを引っ張っていくことにした。
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