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あてはないが、ずんずんと街路を進む。
さすがに扱いは首根っこから手繋ぎに戻しているが、何やらぎゃんぎゃんと後ろから煩い。面倒なので、考え事はぶつぶつ口に出すことにした。
「ランクCで、シーフ……。だめね、そんなんじゃあ到底討伐メンバーに入れない。なんとか、聖女か勇者に面識を」
「……おーい、ティナ?」
「それなら、やっぱり昨日は神殿に行くべきだったんだわ。あのひと達の誰かが聖女になるんですもの」
「おーい」
「ああ、でも、路線を変えて勇者から当たるべきかしら……? 勇者ってどんな人間が」
「こら、聞けよティナ!」
「? きゃっ」
ぐんっ、と手を引かれ、業を煮やしたルークに無理やり振り向かされる。
お前、性格変わりすぎだろ、とか何とかぼやかれるが黙殺。けろりと尋ねた。
「何? ルーク。私忙しいんだけど」
「お前の忙しさの基準ってやつが、俺にはさっぱりわからん……。ほら、あれ」
「ん?」
くい、と彼が顎先で示す先には白っぽい大きな建物。長い階段には老若男女、様々なひとが行き交っている。鐘楼からは厳かな鐘の音が響いていた。
「お前ん家、村の神殿だったのに。それすら忘れたのか? あそこがユガリアのリューザ神殿だ。聖女のこととか気になるみたいだし、寄ってこうぜ」
「えっ! いいの!?」
「そりゃいいだろ。『神殿は万人にひらかれてる』。昔からの慣わしじゃん」
「う、うん」
心許なげに頷くと、それは予想済みだったらしい。
ルークは、ぽん、と私の頭に手を置いた。
「ついでに、昨日の巫女さんにも挨拶してけばいい。何だっていいよ。記憶が戻るきっかけになりそうで、ティナが元気なら」
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