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1、諦め
どうしよう、とユーディットは途方に暮れていた。
彼女には婚約者がいる。アルフォンス・ミュラー。六つ年上で、王太子の側近として働いている。ユーディットとは家同士の繋がりを強固にするための、いわゆる政略結婚であった。
昔から――そして今も、近寄りがたい雰囲気を常に身に纏っており、真面目な性格で他人にも自分にも厳しい人だった。
そんな彼がまさか他の女性と想いを重ね、子どもまでつくるなんて……とユーディットは未だ信じられなかった。
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