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「えっと」青年は顔を赤らめた。「いや……そんな。お礼を言われるほどのことでは。ぼくのほうこそ、気合い入れないとなっかなかハンバーグなんて作らないし。むしろ、お礼を言いたいのはぼくのほうだよ……ああそうか」
わたしの目線を受け止めると美青年はにっこりと笑い、
「結愛ちゃん。ぼくのお願い――聞いてくれる?」
はい、なんでもします、と思わず靴さえ舐めて見たくなっちゃうくらいの破壊的な笑顔だった。
* * *
しごおわ。自分のマンションの部屋に戻るのではなく、その前に、507号室のインターホンを鳴らす。
「はいはーい。……結愛ちゃんお疲れ様」……だから。エプロン姿で頭なでこなでこしてくるのやめれ。「今日はねぇ……今日のご飯を当てられたらご褒美をあげるよ」
ふふんとわたしは笑った。「……肉じゃがでしょう」
あっちゃあ、と目を手で覆い、青年は上を向いた。その様子がおかしくってわたしはくすくす笑った。すると、「……あ。笑ったな」ちょ。やさしいデコピンしてくるのやめれ。
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