◇02. お隣さんの、ハグ。

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 本当なら、帰宅したら、飯を食うのすら面倒で、オイルクレンジングでさっさとメイクを落として風呂に入ってベッドにダイブ。するのがわたしの日常なのだが、こういう状況となってはそうもいかない。なので。わたしはびしーっとしたスーツ姿のままだ。別に、部長だからといって、スーツが必ず、ってわけじゃないんだけど、やっぱ、迫力を出したくってね。女だと会議で舐められることも多々あるし。……この世界は、戦い。  化粧も落とすわけにはいかないので、手洗いうがいを済ませ、そっからクイックルワイパーをかけていると彼がやってきた。「ただいまぁ」と。……きゅん。 「今日はきんぴらごぼうもあるよぉー」  その笑顔。破壊力すさまじいな。まったく。……勘違いしそうになっちゃうじゃないの。  ああいかん。わたしみたいな女が。可愛げのない年上女が。……彼みたいな可愛いワンコ系男子に、愛されるはずがないのに。  もう、結婚なんか――懲り懲りだ。
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