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「……いいよ。いっぱい泣きな」自分の着ているカットソーが涙と鼻水まみれになるのも構わず、伊織くんは、わたしの額を、自分の鎖骨らへんに押し付けるようにした。……身長差。「結愛ちゃん。いっぱい、いっぱい、頑張っているんだね……ほんと、お疲れ様。ぼくの前では気を許していいんだよ? 安心して……」
そんなことを言われるともう。――たまらない。一旦引っ込みかけた涙がまた――あふれだす。
お父さんに泣きつく小さな娘さんみたいにわんわん泣いた。泣くだけ泣いて。こんなに泣いたのはいったいいつが最後だったろう……別れたときですらこんなには泣かなかった。離婚届一枚を置いて出て行った夫。忌々しい思い出が残る、罪のないあの町を飛び出して……仕事に依存して。疲れて。疲れて。疲れ果ててもまだ働いて……。
そんなすべてを、伊織くんが受け止めてくれているんだと。このときばかりはあまえていいんだと……彼の胸に。こころに。頼った。
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