◆03. お隣さんは、想っている。【伊織広大視点】

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◆03. お隣さんは、想っている。【伊織広大視点】

 一目惚れなんて一切信じなかった。結愛ちゃんに出会うまでは。  白石結愛ちゃん。きっと、会社ですごいポジションで、毎日肩で風を切ってスーツをビシッと着こなして颯爽と丸の内辺りを闊歩するOLさん。そんな結愛ちゃんに憧れる部下はあまたいることだろう。……ぼくも。  会社員として働いていたら、結愛ちゃんを、毎日、憧れの目で見ていたんだろうなぁ……。 (結愛ちゃん)  ぎゅ、と彼女を抱きしめる。ぼくの胸で泣くきみはこんなにも小さくてか弱い。――守ってあげたい……。……きみは、ずっとずっと頑張ってきたんだ。悩みなんかも、きっと、自分が吐くよりも聞く方を優先して……このマンションに引っ越してきた翌日の朝に、ベランダで洗濯物を干していると、通勤途中と思われるきみを、見かけた。――真っ赤なバーキンにスーツが決まっていて、格好いい営業さんみたいだと思った。パンプスの踵を鳴らして背筋をぴんと歩くさまがなんとも……素敵だなぁ、って。  でも。
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