◆03. お隣さんは、想っている。【伊織広大視点】

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 ぼくが初めてこの部屋を訪れたとき。きみは、疲労のあまり、玄関に倒れ込んでいたね。……そんなきみを、放っておけなかったよ。ぼくにできることは限られているけれど、せめて。食事の面だけでも……きみの力になれたら、と。  きっと、ぼくのこの気持ちはきみの重荷になってしまう。だから、この気持ちを打ち明けるわけにはいかない。  けどね。……結愛ちゃん。忘れないで。ぼくは――。 「……いつだってきみの味方……なんだよ」号泣が落ち着いた頃を見計らい、すこしだけ。すこしだけ……自分の想いを口に出してみる。「結愛ちゃん。ぼくでよかったらいつでも頼って。だってぼくは……きみの」  そうして、きみの頭を撫でると、そっとその――濡れた、美しい瞳を覗き込み、 「隣人なんだから」  *
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