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◇04. お隣さんの、包容力。
ふ、と顔をあげた。見れば、彼の――美しい顔が間近にあった。
「結愛ちゃん。もっと……あまえていいんだよ?」
誰だろう。この美青年は。あまやかな言葉の響き。
「頼って。……思ったことはなんでも言って。いつも、……支える側に回っていて大変だったんだよね? もっと……ぼくに頼って」
よくも知らない美青年にそんなことを言われている。……伊織くん。それ。完全、勘違いしちゃう台詞。
彼の、親指がするりとわたしの頬を撫でる。パンダになっちゃったね、とあまやかに笑う。その響き。――に。
魅せられる自分がいる。
「待ってて。メイク落とし、隣の部屋にあるからぼく、取ってくる。――あ、そうだ」
ぽすん、とわたしの頭をまるで父親のように撫でた伊織くんは、
「ぼくの部屋に来る?」
* * *
同じ間取りのはずなのに。全然、印象が違う……。
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