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眉をさっとペンシルで描き、ビューラーでまつげをあげ、クリアマスカラを塗る。締めにはFujikoの、眠る前に塗るティントリップを塗ると完了。これを塗ると翌朝唇がピンクに染まっている。可愛いんだ。売っているのはドラッグストア限定。これで、すこしでも――。
きみの力に、なれたら。
「……目ぇ、開いていいよ」
ドレッサーは芸能人の控室みたいに、ゴージャスなものにした。丸い電球が、鏡の三方につけられており、すごい輝きだ。きみの輝きを見事に暴き出す。――恐る恐る、といった調子で、目を開いたきみは、
「わぁ……」咄嗟には言葉が出ないようだった。慎重なきみが、愛おしい。「すっごく綺麗……ねぇ、ありがとう……伊織くん」
ぼくはきみのヘアセットが崩れないようにきみの頭を撫でた。「それじゃ、……お腹空いているでしょう? 結愛ちゃんのお部屋でご飯にしようか」
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