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……そっか。「ありがとうね伊織くん。わたしのことを、……受け止めてくれて」
「はい。あーんして結愛ちゃん」突然話を切った伊織くんがなにをするかと思えば。フォークでつくねをぶっさして、わたしの顔の前に持ってくる。
反射的にあーんしかけた自分はいったいなんなんだ。
「えー。駄目ぇー?」てへへと笑う無邪気な美少年のような美青年はなんなんだ。「結愛ちゃんのこと思ってせっかくぼくが使ったのにぃー。もーう。食べないなら強制あーんしちゃうよ?」
……げふん。「そんな……恋人みたいな真似、やめてくださいませんか? 誤解、しちゃうじゃないの……」
すると、フォークをす、と下ろした伊織くんは(何故下ろす。無念)、「うん。確かにぼくは、結愛ちゃんの、ただの隣人だけれどね……」
たっぷりと間を置いた彼が、なにを言うのか、次の言葉を待てば、
「けど。ぼくは、結愛ちゃんが好きだよ」
――突然の告白。すかさず、つくねをあーんされ、告白ごと、この喉に飲み込んだ。あまい切ない……味がした。
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