542人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
あれ以来、怖くて、結愛ちゃんには確かめられずにいる。臆病者の自分。……別に、ぼくは、結愛ちゃんに、自分がどんな人間だかは話してはいないし……視聴者さんでもなく、ぼくを知らないってことは確かだけれど……判断材料が必要だろうか? ぼくがどんな考えの持ち主で、何故、結愛ちゃんに焦がれているのか、話したほうがいいだろうか。――悩む。
悩みながらも結局料理を作って、メッセを待ち、届いたタイミングで仕上げに入る。慣れている。ありきたりでありふれた、宝物のようなぼくの、日常。――どうしよう。
顔見たら、好きだ、……ってまた言っちゃいそうだ。困っちゃうよなぁ。結愛ちゃん。ぼくは――。
その日は珍しく、結愛ちゃんから、『ごめんなさい。今日はご飯いらないです』とメッセージが来て。なにげなく、ベランダで洗濯物の処理をしていると、ちょうどマンションの玄関辺りで信じられないものを見た。……結愛ちゃんが。
男の人と、一緒にいた。
ぐらりと、視界がブレる感覚があった。気づけばベランダの床に膝をついており、は、は……と自分の呼吸が乱れているのに気づいた。落ち着け。――別にぼくは。
最初のコメントを投稿しよう!