542人が本棚に入れています
本棚に追加
/64ページ
結愛ちゃんの恋人でもなんでもないのだから。嫉妬なんてするほうがおかしい。なのに……。
(落ち着け)と自分の胸に言い聞かせる。――求めるべきは、結愛ちゃんの幸せだけなんだ。もし。結愛ちゃんに、別の誰かがやさしくしてくれるのなら、ぼくはそっと身を引くべき――。
分かっているのに。理性では分かっているつもりでも、本能は負ける。勝手に涙が流れており、ああ、自分は、もう、本格的な恋に落ちてしまったのだと、冬の訪れを感じる寒い風のなかで、自覚していた。
*
最初のコメントを投稿しよう!