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『日常、ってのを大切にしたいから』と彼は言う。『あんまりゴージャスでセレブ感出すと、視聴者さんは、あぁこのひとは別世界のひとなんだなぁ、って距離を感じてしまうから。お隣さん感を大事にしているんだ』……だから、こういう、シングルや、二人暮らしのカップルが住みそうな、ちまっとした、2LDKの部屋に暮らしている。なんと、彼のドレッサーが置かれた部屋はコスメ部屋なんだとか。コスメ専用の部屋、らしい。……今度見せて貰おうかな。
いやいや。返事をするのが先でしょう。
……しかし。彼。伊織くん、わたしが、バツイチ、ってこともきっと知らないだろうし年齢も……。いったい彼は、こんなわたしのどこに惚れたのだろう。素朴に疑問でもある。まぁ、二十代の頃は普通にモテたけれど、それだけだし。そんなもんだし。若い頃にモテるのって結構当たり前だし。……そんで。
『はい。あーんして』あーん、と言って来た伊織くんに、心をときめかされる自分がいる。どきどきする……意識しちゃう。挙句。わたしのことが、好きだなんて。……言わないで欲しかった。いや、言われてみたかった。嬉しいよ。正直に。
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