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小林くんは、花見町を気に入ったみたいで。物件を探そうかな、なんて言っていた。結婚式の日取りも決まっている割にはのんびりしたもので。お式の準備で手一杯で住居どころではないらしい。ドレスも最近決まったと聞いて、聞いているこっちがひやひやする。
そして。
その翌日、衝撃的なメールが来た。
『結愛ちゃん』
『お仕事の日にごめんね』
『ぼく、ごはん持っていくの、これからは遠慮するよ』
『見ちゃったんだ』
『結愛ちゃんには、素敵な相手がいるんだね』
『幸せになってね』
『いままでありがとう』
「……おいおい」電車内で、つり革を手で掴みながら独り言を言ってしまった。「なにを、勘違いしているんだ……やっば。あれ、絶対見たんだ……」小林くんは酒が入っていて、白石さん美人ですねえ、なんて絡んできた。――頭をぽんぽんされたときに、瞬間的に、伊織くんのことが思い出され、小林くんの手を、手で払った。……あんまり彼は気にしていないようだけれど。
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