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「いやちょっとお姉さんそのまま寝るのはまずいっしょ。……よ、と」重いんですけど大丈夫? 青年は軽々とわたしを抱き上げた。「すみませんーちょっと失礼しまーす」……好青年に見せかけて案外大胆なところもあるんだな。名前も知らない女の部屋に入るだなんて。
「おあっと」服があちこちに散らかっており、ここを自由に歩くのはわたしだけに許された特権だ。「あっぶね。お姉さんのお洋服踏むところでしたよ。……とにかく、どぞ」
「……ありがとう」そういえば。この、やけに肌の白い青年に向けて声を発するのはこれが初めてなのだった。「こんな体勢でごめんね……わたし、白石結愛。……初めましてなのになんかごめんね……みっともないところ見せちゃって……」
「伊織広大って言います」伊織が下の名前かと思っていた。……と。ナチュラルにわたしの顔にかかった髪を撫でる辺り、絶対女慣れしているなこのイケメン。「お姉さん。なにか飲むものとか冷蔵庫にある?」
力なく答えた。「……水入りのペットボトルしか」
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