◇08. お隣さんが、気になっちゃう。

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 気持ちは、はっきりさせたい。……わたし。ご飯だけで……ご飯目当てで、あなたのことを、好きになったわけじゃないんだよ? ……泣いているとき、静かに、抱きしめてくれた。毎回、作ってくれるご飯が、あったかくて、美味しかった。白いご飯はきっと炊き立てで。こっちが気を遣って食事の後、台所でタッパーを洗っていたりすると、いいのにそんなの、と言って、やらせてくれなかった。料理の買い出しもして準備もして後片付けまでしてくれる完璧な男。……思い出される。それは。 『普通』のことではないのだ。当たり前でもなんでもない。……元夫は。実家育ちで、自分のことがなんにも出来ない、典型的なお坊ちゃまだった。……だったら庶民のわたしと結婚なんかしなければよかったのに。一緒にいるたびに不快になった。だってあのひと。女が、なにもかもをするのが当たり前だと思っているんだもの。
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