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「用意周到ね」とわたしは笑った。抱き寄せられ、そのぬくもりを感じながら、「でも。……あなたのそういう、抜け目のないところも、好きよ」
「誉め言葉として受け取っておくよ」とわたしの左耳のピアスをいじくる広大は、運転手さんに、「じゃあ、区役所まで、お願いします」
「はい。安全運転で参ります」聞き覚えのある女の子の声だ、と思ったら、なんと。うお。イケメンすぎる駅員で有名な、花見町の駅員さんじゃあないですか。一度、姫香ちゃんの彼氏だと、ご紹介頂いたことがある……!! あの界隈でも有名な存在だ。……ありがとう。
生きているすべてのことに、ありがとう。
ぬくもりを感じる。あたたかな……愛おしいこのひとのぬくもりを。生涯、味わっていたい。ずっとずっと幸せ……わたしが、彼を、幸せにするのだ。永遠に。生きている限り。
車はスムーズに区役所まで辿りつく。予想外だったのが、雨が、急に、降ってきたこと。用意がないのでコンビニにぬれねずみになりながらビニール傘を買って、相合傘をした。笑った。……こんなこともあるよねと、笑い合えるふたりの関係が、理想的だった。
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