◆13. お隣さんが、大好きです。【伊織広大視点】【最終話】

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◆13. お隣さんが、大好きです。【伊織広大視点】【最終話】

 お。今日は大根が安い。一本で百円だ。うしうし。  スーパーに立ち寄ると知らず笑みがこぼれでる。……まったく。愛情という努力の必然性よ。ぼくの胸に、希望を与えてくれる。きみという希望の星のもと。愛は生まれた。知らないうちに。……今夜は。  なににしよう? 大根と手羽元の煮物なんかどうだろう。そうだな。ゆで卵も必要かもしれない。常温から茹でなきゃだからパックの卵も買って帰ろう。明日は。明後日は。なにを作ろう……。 『美味しいぃー』……きみの。喜ぶ顔が見たいから。いくらでも頑張れる……どんなことだって叶えられる気がするんだ。空を飛ぶことでさえも。  そろそろ本気で一緒に暮らそうか。それとも、隣人のままじれじれを楽しもうか。もうすこしだけ。あとすこしだけ……。  いたずらに時は過ぎ、季節はもう、冬を迎える。人肌が恋しい時期になった。全然恋を出来なかったはずのぼくが恋をした。熱烈で鮮烈な恋を覚えた秋の夜。……そうだな。  こんなふうに、月が綺麗な夜にきみと出会ったのだった。……きみは、いつも、眩しい。ぼくのこころのなかを鮮明に照らす。鮮烈な太陽だ。ずっとずっと……。 (愛している)
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