834人が本棚に入れています
本棚に追加
アレックスの命を狙う連中がやって来た
「なんだって?っていうか、どうしてこんなに部外者がいるんだ?」
フリオは、いまさらわたしたちの存在に気がついたみたい。
筋肉質の上半身をムダに見せびらかしつつ、わたしたちを大げさに見まわしている。
「あなた、会ったことある?」
ビビアナと目が合うと、彼女が指さしつつ尋ねてきた。
「だったら?どこでいつ会ったか、思い出せばいいでしょう?わたしからあなたに告げるつもりはないから」
即座にやわらかいものの言い方で返しておいた。
「なによ、このイマイチ女」
すると、ビビアナがまたしても耳障りな叫び声を発した。
「イマイチだって?」
「アニバル様、ダメですよ。そこは、『イマイチなんかじゃない』って否定するところです」
「そこの二人、きこえているわよ」
まったくもう。アニバルとカルラったら、ビビアナの言うことを真剣に受け止めちゃって。
「いや、イマイチ女はどうでもいい。それで、おまえたちはだれだ?」
「その男の元妻の友人だ。さっきから、その男と話をさせてほしいとお願いしている」
フリオの問いに、生真面目に答えるアレックスが楽しすぎるわ。
「んんんん?おれほどじゃないが、その美貌、どこかで見たような気が……」
フリオは、首を傾げてから手で自分の胸を叩きはじめた。
「思い出せん」
彼は胸がムダに真っ赤になっただけで、結局思い出せなかったみたい。
「うわっ!ボスッ」
だれかが叫んだのと、門の方から大勢の軍服姿の男たちが駆けてくるのとが同時だった。
そろそろこのやり取りに飽きてきたところだったから、こういう急展開は大歓迎よ。
読者だってこういうダラダラなシーンばかり続くと、刺激や急展開を望むはず。
「くそっ!襲撃か?」
フリオが警戒するのもムリはない。
悪の組織が大きいわりに地元の警察の規模が小さかったりすれば、軍に出動の要請がかかることはあるあるである。これは、リアルな世界も同様。平和なときが続いていて、軍も活躍する場が天災時くらいになると、よろこんで悪党討伐にのりだしてくる。
フリオは、そうかと思ったに違いない。
「やはり、ここにいたっ!」
が、様子が違った。っていうか、わたしの読みは違ったみたい。
フリオの屋敷内に突入してきた軍服姿の男たちの目的は、どうやらフリオではないみたい。
「ここに入っていったと、通行人にきいた通りだ」
なんとなんと、先頭にいるのはあのベレー帽の男なのである。
ということは、軍服姿の私兵たちはなんとかっていう公爵?侯爵?、とにかくどこかの貴族の私兵たちなわけで……。
さらにいうと、彼らの目的は、アレックスを殺すことで……。
「やっと見つけたぞ」
ベレー帽の男は、どこかの貴族の私兵たちを従え勝ち誇ったように宣言した。
よかったわね。これで目的を果たせるかもしれない。そうしたら、黒幕に叱られずにすむ。約束通りの報酬をもらうことが出来る。奥さんや子どもたちにプレゼントを買ったり、レストランに食事に行ける。それとも、まだ結婚していなくって、両親にプレゼントをしたり食事に連れて行けるかもしれない。
どちらにしても、家族サービスが出来るわよね。
ちょっとだけ微笑ましく思える。
そうすると、アレックスには死んでもらわなきゃ。
でも、やはりそれはマズいわよね。
そこまでかんがえたとき、パッと閃いた。
「ボスッ、ボスッ!あの連中は役人です。ボスがここに戻ってきたのをだれかがチクったようです。それで、捕まえに来たんです」
だから、フリオにその閃いたことをささやき声で伝えた。
わたしってば機転がきくわね。
「くそっ!役人の犬はだれだ?おまえら、やつらを追い払え」
フリオってば、悪党のボスのわりには素直よね。
大声で手下たちに命じた。すると、屋敷内にいる他の手下たちも出てきた。
最初のコメントを投稿しよう!