アレックスの命を狙う連中がやって来た

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アレックスの命を狙う連中がやって来た

「なんだって?っていうか、どうしてこんなに部外者がいるんだ?」  フリオは、いまさらわたしたちの存在に気がついたみたい。  筋肉質の上半身をムダに見せびらかしつつ、わたしたちを大げさに見まわしている。 「あなた、会ったことある?」  ビビアナと目が合うと、彼女が指さしつつ尋ねてきた。 「だったら?どこでいつ会ったか、思い出せばいいでしょう?わたしからあなたに告げるつもりはないから」  即座にやわらかいものの言い方で返しておいた。 「なによ、このイマイチ女」  すると、ビビアナがまたしても耳障りな叫び声を発した。 「イマイチだって?」 「アニバル様、ダメですよ。そこは、『イマイチなんかじゃない』って否定するところです」 「そこの二人、きこえているわよ」  まったくもう。アニバルとカルラったら、ビビアナの言うことを真剣に受け止めちゃって。 「いや、イマイチ女はどうでもいい。それで、おまえたちはだれだ?」 「その男の元妻の友人だ。さっきから、その男と話をさせてほしいとお願いしている」  フリオの問いに、生真面目に答えるアレックスが楽しすぎるわ。 「んんんん?おれほどじゃないが、その美貌、どこかで見たような気が……」  フリオは、首を傾げてから手で自分の胸を叩きはじめた。 「思い出せん」  彼は胸がムダに真っ赤になっただけで、結局思い出せなかったみたい。 「うわっ!ボスッ」  だれかが叫んだのと、門の方から大勢の軍服姿の男たちが駆けてくるのとが同時だった。  そろそろこのやり取りに飽きてきたところだったから、こういう急展開は大歓迎よ。  読者だってこういうダラダラなシーンばかり続くと、刺激や急展開を望むはず。 「くそっ!襲撃か?」  フリオが警戒するのもムリはない。  悪の組織が大きいわりに地元の警察の規模が小さかったりすれば、軍に出動の要請がかかることはあるあるである。これは、リアルな世界も同様。平和なときが続いていて、軍も活躍する場が天災時くらいになると、よろこんで悪党討伐にのりだしてくる。  フリオは、そうかと思ったに違いない。 「やはり、ここにいたっ!」  が、様子が違った。っていうか、わたしの読みは違ったみたい。  フリオの屋敷内に突入してきた軍服姿の男たちの目的は、どうやらフリオではないみたい。 「ここに入っていったと、通行人にきいた通りだ」  なんとなんと、先頭にいるのはあのベレー帽の男なのである。  ということは、軍服姿の私兵たちはなんとかっていう公爵?侯爵?、とにかくどこかの貴族の私兵たちなわけで……。  さらにいうと、彼らの目的は、アレックスを殺すことで……。 「やっと見つけたぞ」  ベレー帽の男は、どこかの貴族の私兵たちを従え勝ち誇ったように宣言した。  よかったわね。これで目的を果たせるかもしれない。そうしたら、黒幕に叱られずにすむ。約束通りの報酬をもらうことが出来る。奥さんや子どもたちにプレゼントを買ったり、レストランに食事に行ける。それとも、まだ結婚していなくって、両親にプレゼントをしたり食事に連れて行けるかもしれない。  どちらにしても、家族サービスが出来るわよね。  ちょっとだけ微笑ましく思える。  そうすると、アレックスには死んでもらわなきゃ。  でも、やはりそれはマズいわよね。  そこまでかんがえたとき、パッと閃いた。 「ボスッ、ボスッ!あの連中は役人です。ボスがここに戻ってきたのをだれかがチクったようです。それで、捕まえに来たんです」  だから、フリオにその閃いたことをささやき声で伝えた。  わたしってば機転がきくわね。 「くそっ!役人の犬はだれだ?おまえら、やつらを追い払え」  フリオってば、悪党のボスのわりには素直よね。  大声で手下たちに命じた。すると、屋敷内にいる他の手下たちも出てきた。
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