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今日のレセプションパーティーは、プラハ議員の中でも大臣を務めるような要人の邸宅で開かれるガーデンパーティーだそうだ。
招待されているのは、議員や企業の社長、各国の大使館員などだという。
顔繋ぎと情報交換が主目的のようだった。
タクシーに乗って数分で到着すると、そこは庭が非常に広い立派な邸宅だった。
私たちは受付を済ませ、ガーデンに案内され、フルートグラスに入ったシャンパンを手渡される。
飲み物に警戒しがちな私は、他の人が問題なく飲んでいるのをチラリと確認してから口をつけた。
そして儀式のように、軽く目を閉じて役に入り込む。
(これは約2〜3時間程度の舞台だ。そして私はこの舞台上では、桜庭智行の婚約者役。昔から憧れていた人と結ばれて幸せ絶頂な女の子)
設定を再度刷り込むように脳裏に刻み、目を開けると、いよいよ本番の舞台が開幕した。
舞台となるガーデン内にはドレスアップした煌びやかな雰囲気の男女が、会話をしながら楽しんでいる。
おそらくただ楽しんでいるのではなく、水面下では情報の探り合いが繰り広げられているのであろう。
智くんがガーデン内に足を踏み入れると、たくさんの人の視線が集まる。
特に女性からは熱い視線が注がれ、隣の私を値踏みするように見ている気がする。
私たちはまず主催の議員夫婦に挨拶へ向かった。
智くんの腕に手を添えてエスコートされながら、彼のパートナーとして優雅に振る舞う。
『Mr.ノヴァコバ、Mrs.ノヴァコバ、本日はお招きありがとうございます』
『やぁMr.桜庭、久しぶりだね。今日はずいぶん綺麗なパートナーを連れているじゃないか。君が若い女性をパートナーにしているのを初めて見るよ』
『紹介します。彼女は僕の婚約者です』
そう紹介され、私はニッコリと上品に微笑みながら挨拶をする。
『まぁ!Mr.桜庭にこんなに素敵な女性がいらっしゃったなんて!あなたって、私の周りにもファンが多かったのよ?』
ご夫人は「ふふふっ」と上品に笑いながら茶目っ気たっぷりな口調だ。
そのまま智くんはノヴァコバ議員と、私はご夫人と男女で別れるようになり会話が続く。
『あなたと一緒にいるMr.桜庭は、なんだか顔色がとっても良く見えるわ。きっと幸せなのね』
『もしかすると食事が変わったせいかもしれません』
『あら、食事?』
『ええ、一緒に住むようになって私が作っているんです。といっても、豪華なものではなく、日本の家庭料理なんですけどね』
こんな豪邸で話すことじゃないかもと私は苦笑いぎみにしていると、ご夫人は爛々と目を輝かせる。
『あなた料理ができるの?しかも日本の家庭料理だなんて!プラハでは日本食ってそんなに食べられないから、私とっても興味があるのよ。今度うちで作って振る舞っていただけないかしら?』
どうやらご夫人は以前日本に旅行に行った時に食べた日本食が大層お気に召したそうなのだ。
プラハにも数件、お寿司や和食、ラーメンを提供するレストランはあるものの、それ以外の日本食に興味があるらしい。
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