(一)

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(一)

 今朝はFAXの音で目が覚めた。こんなものを使うなんて、時代遅れも甚だしい。以前に比べれば幾分かましだけど、世間一般の現状からすればもはや十分古典的な連絡手段だ。  私は掛け布団をどかすと、裸のまま壁際に近づき、カラーボックスの上に置かれたFAX台の用紙ホルダーから滑り落ちたFAXを拾い上げた。  FAXには「指令書」と書かれていた。宛名は黒塗りにされていた。 「誰宛よ、これ」  寝ぼけたままそうツッコみ、書かれている文章に目を通した。  「コードネーム『志木アサカ』は、玉淀コウジのカップルを成立させること。なお、相手は任意とする。天界の神より」 「相手は任意って、相変わらずいい加減ね……。まあ、いいわ。こちらはいつもの規定通りに、本人の希望を最優先する形でやるわ」  私はそのFAXを折りたたんで鞄に入れた。  そしてバスルームに入った。 (続く)
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