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私は友人がいないかと、夜桜公園を一人歩き回った。
だが、二時間ほどしても友人の姿は見つからなかった。
春の夜風が吹いてくる。
時間はもう7時を回った頃だ。
私の中で心細さが増した。
その時、後ろから声をかけられた。
真っ暗な夜桜公園は、外灯の明かりでしか相手の姿形が見えなかった。
「ちょっと、こっちへ」
人影はそう言うと、近くの外灯へと私を連れだった。
「もう、普通こんな時間までいる? そんなにまでして探さないわよ」
声の主はたった一人の友人だった。
「ええ、でもねえ。心配で……だって……」
「いい。私のことは忘れて」
「だって……」
「父さんも母さんも諦めているはずだったのに、私のことをこんなにも探してくれるなんてね」
「だって……友人でしょ。それもたった一人の」
外灯に照らされた友人のシルエットが、捲し立てているけれど、私の中では奇妙な安心感がどっと出ていた。
知らない町。
こんな当てずっぽうな私でも大切な人が見つけられる。
人生無駄じゃないんだ。
夜風が一際強くなった。
外灯の光を反射した桜の花びらが舞う。
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