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「ねえ、知ってる? この夜桜公園の桜は全部。ゆうに千年は生きているんだってさ。ひょっとしたら、私たちみたいに些細な喧嘩で一人がいなくなって、そして、友人は一人で探してくれる。そんな変わった人たちもいたんじゃないかしら」
「私は……ただ、話したかっただけなの。独り言はもう嫌。あなたと話したい。いや、これからもずっと話したかった……」
「そんな……。私は……独り言が好きよ」
そう、友人と私はそんな人だった。
孤独にどこまでも耐えられるのは友人だけだ。
私には無理だった。
独りがいいとは昔は思っていた。
けれども、いつの間にか友人と何か話さないと憂鬱になるようになった。
もう、私は憂鬱になるのは嫌だったのだろう。
こんな何の価値もない私には、友人との会話がどうしても必要だった。
そうだ。友人は私に価値を見いだしてくれる。
独りでは決してわからなかったちっぽけな価値。
今でも、はっきりとはわからないけれども。
そんな友人との関係でのみ、自分の価値がわかるんだ。
価値ってなんだろう?
それがないと私は生きていけなくなった。
友人と私は少しだけ違っているのかもしれないけれど……。
価値は人それぞれだけれど……。
私には友人が与えてくれる価値が命と同じくらいに大切だったのだ。
だから、もう友人を失いたくなかったのだ。
友人の前でしか自分の価値を持てない私は、いつもは日常で何かを演じているのだろうか?
桜の花びらが降る。
そんな夜空だった。
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