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プロローグ
目が覚めると、鉄が錆びたような、そんな鼻をくすぐる臭いが充満していて、辺りは暗くて赤い。
そして肉塊が周りに落ちている。
とても醜い色で形で、ずっと見てはいられない物だ。
何が起こっているか状況を把握できない。
とにかく体を起き上がらせて逃げよう。
ーーピチャ
地面に手をついたとき、ようやく自分は水溜まりの上で寝ていたことに気づいた。
水の音は憎いぐらいに綺麗に、とても恐ろしく響いた。
「やっと起きてくれた? 僕のかわいい眠り姫さん」
後ろから声がした。
眠り姫をさます王子みたいな柔らかくて温かい青年の声。
私は彼を知っている。
怖くて、恐ろしくて、体が動かない。
だんだん鼓動も大きく鳴っていき、体温がサッ……と下がっていく。
ーーピチャ ピチャ ピチャ ……
じょじょに近づく血液の音。
鼓動が速く、大きく、息も苦しく……
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