ありったけの愛で

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「うわっ、冷蔵庫に何もない。親父のヤツ買い物しなかったんだ」    あるのはビールと冷酒だけかよ、酒だけは切らさないあたりが思い切り親父らしいけど。   「何か買ってくるよ、ちょっと待ってて」 「あ、一緒に行く」    俺の部屋にいた静流が慌てて玄関先に出てくる。   「一緒に行こうよ、ね?」 「うん」    俺は嬉しいけど。    近所のスーパーで自分達の飲み物と夕食の材料を買う。  久しぶりに静流が何か作ってくれるというので、すごく楽しみだ。    実は俺…帰りの車の中でずっと考えてた。    俺は本当にこのままでいいのかな。    俺はずっと前から、多分静流と初めて出会った中一のあの時から静流が好きで好きでたまらない。    時間が経つにつれて、俺はどんどん静流に惹かれて行く。今じゃいっぱいいっぱいだ。    優しい静流。  可愛い静流。  綺麗な静流。  その全部が俺のものだったらどんなにいいだろうと、いつも同じことを考えている。    けど、俺には勇気がない。    せっかくこんなに静流が楽しそうにしてるのに、俺がそれ以上を望んで告白して…ダメだったらどうしよう。    雷の時、静流が二度と俺に抱きついてくれなくなったらどうしようって。     いつも同じ事ばかり考えて、結局堂々巡りの俺だった。
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