こっちこっち

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こっちこっち

首吊りは途中で首が痛くて躊躇った。飛び降りは、高所恐怖症のせいで、途中で階段を下りた。駅のホームでは、僕の前に飛び降りた人が居て、構内はパニックとなり、実行する事すら出来なかった。 だから、今日僕は車に轢かれてこの腐った世界からサヨナラする事に決めた。 皆が、学校のクラスの皆が代わりに死んでくれれば、僕はまだ此処に居れるかもしれない。でも、そんな事が起こる事なんて無い。 だから僕が、僕からこの世界を見捨てるんだ!? だって誰も僕何て、本当の僕の事何て見てくれはしないのだから…… 僕は意を決して、車が飛び交うアスファルトに駆け出そうとした。 そしたら……声が聴こえたんだ…… 『こっちこっち』って 道路側じゃなくって、歩道側の方から……誰かが誰かに向かって呼ぶ声が…… 最初はさ、他の誰かと待ち合わせをしてさ、そんでもって再会して、道路に向かおうとしてる僕何かさっ、彼等には透明人間と変わらなくって、存在してるのかも怪しい位に、眼には投影されててもさ、赤の他人の僕何かどうなったて知らないから、見えてても関係なくって、だから僕はそう思ったからさ、そのまままた道路に足を入れようとしたんだ。 まるで溜池とかの水に足をさっ、沈める感じで重たい足取りで中へ中へ入ろうとしてたんだ。 でも、また聴こえたんだ。 『こっちこっち』って でも、やっぱり自分に僕に対して声を、見ず知らずの僕にさ、声を掛ける筈が無いって思って、足をあげるんだけど、そうするとまた声がするんだ。 『こっちこっち』って そして…… 『そっちじゃ無いって、こっちこっち』って 嘘!? 見ず知らずの誰かが僕に……声を…… 振り向くとさっきまで誰も居なかった、ガードレールに座る同い年位の少年が見えたんだ。 座れ無い事は無いだろうけど、運動音痴の僕じゃ多分バランス崩して後ろにひっくり返って、後頭部を打って……想像するだけで、物凄く痛いし、怖くなった。 本の数分前には、誰も居なかったのに…… しかも、此処に来るにはあの歩道橋か? 遠くに有る向こうの信号を渡らないと来れない。 一体彼はどうやって来たんだろう?
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