別れた理由

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翌朝、結衣花との女子会でちょっと飲み過ぎたかなって思いながらも、いつも通りに出社出来てしまう社会人7年目、偉いな私。 そんなことを思いながら、オフィスに向かう。 「桜井、久しぶり。変わんねぇな。」 エレベーターを待っていると、そう声をかけてきたのは同期の、えっと、誰だっけ?見た目、好青年の高身長。あっ、思い出した、玉置君だ。あれ?確か、関西勤務だよね、出張?えっと、そう言えば、彼、こっちに来る辞令がでていたような・・・ 今回の異動では私たち同期にも結構、動きがあった。玉置君もその一人だったかも。社内メール、ちゃんと見ておけばよかった。そうか、玉置君、本社に戻ってきたということか。 「よし、今度、飲みに行こうぜ。歓迎会ってことで」 で、私、いきなり飲みに誘われてます?これって、二人でじゃないよね?同期会を開けとせっつかれてるということなのか?とりあえず、黙っている訳にもいかないだろう。 「久しぶり、玉置君。今月からこっちに異動になったんだよね?」 いかにも知ってましたって顔をする。社会人ですから。 「そうそう、また宜しく。こっちのみんな元気?」 「元気じゃないかな。飲み会ね。そうだね、せっかくだし、久しぶりに同期会でもする?なんなら私、幹事するよ」 「同期会じゃなくてもいいんだけど」 「うん?えっと・・・・?」 まさか二人じゃないよね?と玉置君の様子を伺う。 エレベーターの扉が開いたから、少しだけ絡んだ視線を外して、私たちは乗り込んだ。他の社員も乗り込んできたから、私達の会話は途切れたままだ。 さっきの何?えっと、ちょっと意味が分からないんですけど。久しぶりに会ったかと思ったら、いきなり飲みに誘われたよね、さっき。それも二人でってこと?なんだ、この展開?でも歓迎会って言ってたから、そんなに深く考える必要もないか。なんか私の知ってる玉置君とは少し様子が違うような気もするけど。久しぶりに会ったから、そう思うのか。 そんなことを考えていると、私の下りるフロアに着いたらしい。エレベーターがポンと音をたてて、静かに扉が開く。私が下りるフロアで玉置君もエレベーターを下りた。 「桜井、片桐さんと別れたんだよな?」 自分の部署に向かおうとしたところで、単刀直入に言われてしまう。いきなりですか・・・ちょっと胸の辺りがシクッとするけど、ここで落ち込んでいる場合ではないな。ここは大人の対応で。 「支店にまで、噂いってるんだ?」 「まぁね。片桐さん、ちょっと有名人だし。ってことは、今、フリーだろ?どう?それなら結婚前提で俺と付き合わない?」 いよいよ意味が分からない。私達、そんな関係でしたっけ?私、どっちかというと玉置君には苦手意識があったような。そっか、私、からかわれてるんだ。そうだと分かれば、対応も変わる。思わず玉置君を睨みつける形になってしまった。 「はい?何の冗談」 「俺らの年齢で付き合うとなったら、どうしたところで意識するだろ、結婚」 「いやいや、ないし。それに玉置君と付き合うとか意味分かんないし」 そう言ったのに、玉置君が私の方を真っ直ぐにみる。なんなのよ。 「まぁいいや。でも考えといて。後、飲み比べのリベンジもな。約束、覚えてるよな?」 「何のこと?」 「それも思い出しておいて。今回は先手必勝でいかせてもらう。他のヤツが現れる前に、こっちも動くから」 それだけ一方的に言うと、玉置君はまたエレベーターに乗りこんだ。こちらを振り向くと、ニカッと笑って手を振った。エレベーターの扉が閉まる。 付き合うとか、結婚とか、マジで何言ってるの?解析、不可です。 占い師が「運命の出会い」とか言ってたなと思い出す。 もしかして、これですか?えっ、マジで?まさかだよね。 「桜井さん、乗らないの?どうかした?」 エレベーターの前につっ立ったままだったからか、私に同僚から声がかかる。 「何でもないです。乗らないです。すみません」 私はそそくさと自分の部署に戻るべく、歩みを進めた。 きっと今朝の私の頭は酔いが覚めきっていないんだ。
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