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通話終了というスマホの文字を見ながら、楓君のことを思っていた。
学生時代の私は、楓君の何を見てたのかな?私が知っている楓君は私が引っ張ってあげなくちゃいけないんじゃないかと思うくらいの頼りなさと、もどかしさばかりが目についたけど、実は私のことをすごく想ってくれて、優しく接してくれていただけだったんじゃないのかな?何につけ、私の気持ちを最優先してくれていたってことだよね。
今になって、そんな風にやっと思えてきた。だって私が頼り甲斐があって、憧れて付き合った片桐さんの本当の姿は・・・休日にデートで外出するのも面倒そうで、要は私だけが行きたい所につきあうのが面白くなさそうというか。自分の興味のあるところなら一緒に出かけてくれたりしたけど。それに、爽やかそうで面倒見のいい雰囲気は外向きで、結構、女好きの、それでいて冷淡な人だったし。いつもどこか不安だったんだよね。私に会わない時間に誰と会っているんだろうってヤキモキして、なんで電話や連絡をとるのはいつも私からで、片桐さんからは連絡をもらうことが少ないんだろうって。だから彼から連絡がくると、嬉しい反面、なんでこんなにほったらかしにするのって、彼が機嫌の悪くなりそうなことを言ってしまって。楓君のそばにいたときは感じることのなかった重苦しい気持ちだったと思えてくる。片桐さんにイラついている自分が、そんな風にドロドロと思ってしまう自分の気持ちが嫌いだったんだということが今なら分かる。
なんで、あの時、私、楓君と離れちゃったんだろう?もう少し彼のそばにいれば、彼の良さをもっともっと分かることが出来たかもしれないのに。あの時の私は、幼な過ぎたんだろうか。でも、きっとこんな風に思えたのは片桐さんとの別れがあったからだ。
そんなことを考えながら、やっとの思いで、シャワーを浴びた。片桐さんと別れた時には出なかった涙が意外なほど、自然に流れていった。
どうやら私は・・楓君のことが自分で想っていたより好きだったのかもしれない。そして、自覚する。私は、どうやら恋愛が得意じゃないらしいってことも。
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