あなたと離れた理由

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あなたと離れた理由

「死んでよ」 親友の来夢(らいむ)が顔を歪めながら 涙をボロボロ流す。 「ごめんね、来夢」 来夢から飛び出た言葉に心臓に鋭利な刃物で傷つけられたような痛みを感じながらわたしは涙を流し、謝罪する。 わたしの父は、来夢の父を殺した。 いや、正確には飛び出してきたわたしの 父を轢きそうになり、ハンドルを勢い良く回したところ、ガードレールにぶつかり死んでしまったのだ。 「わたしの前から消えて!!」 来夢が取り乱すように頭を抱えて叫ぶ。 「ごめんなさい、本当にごめんなさい。」 わたしは頭を下げ続ける。 お父さん、どうしてわたしにこんな思いをさせるの? 自分だけ、苦しみを逃れ、自殺して。 わたしは、歯を食いしばる。 「いいからとっとと消えてよ!!」 枕がわたしの頭に勢いよくぶつかった。 来夢がそう言うなら、わたしは消えることを選ぶ。 「わかった。本当にごめんなさい」 わたしは、それだけ言うと、踵を返した。 それから、わたしと来夢は 話さなくなり、進学先もあえて、来夢の進学先と 離れた場所を選んだ。 来夢の願いを叶えるために。 ある日、来夢からラインが届いた。 『あのときは、ごめんなさい。 死んで、なんて酷い言葉言ってごめんなさい。 優月ともう一回やり直したい』 許してくれるの?? だとしても、父のしたことは消えない。 揺らいだ心を抑えて、わたしは返事を打つ。 『来夢は謝らなくてもいいんだよ。悪いのは わたしたちなんだから。本当にごめんね。 やり直したいって言ってくれてありがとう。 でも、わたしは来夢のために消えることを選んだ。 だから、やり直すことはできない。ごめんね』 打ちながら涙が出てきた。 でも、これでいいんだ。 これが、あなたと離れた理由。 わたしは一生、父の罪を背負って生きていく。
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