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キールトは煩わしそうな顔をして、皆を急き立てた。
「ほら、早く片づけて出かけろよ。道具置き場の鍵当番は僕らだから、モタモタしてると施錠しちまうぞ?」
隊員たちがぞろぞろと道具をしまいに行く中、オルボーはそこに残り、アイリーネたちに「なあ」と声をかけた。
「実際のところ、おまえらってどうしてるんだよ?」
「どう、って……」
「宿舎では同室とはいえ、四人部屋だから何もできねーだろ? 毎日婚約者と寝起きを共にしてて、よく抑えがきくよなあ」
オルボーが訊きたいことは解ったが、上手い返答が浮かばないアイリーネの隣で、キールトは涼しい顔をして答えた。
「公私はきっちり分けたいからな。僕たちが風紀を乱さないと信じて上の人たちは相部屋にしてくれたんだから、駐屯地にいるときは良き同僚として過ごそうと決めてるんだ。な、アイリ」
「う、うん」
「おお、意識高え……! 二人ともさすが同期の星だな」
称賛の声を上げた後、オルボーはニヤリと意味ありげな笑みを浮かべた。
「――てことは、休暇のときに一気に発散してるってことか」
「え……」
「長い休みに入ると、嬉しそうに連れ立って温泉保養地の別荘に行くもんなあ。再来週から始まる夏期休暇も、待ち遠しくてたまんねえんだろ?」
アイリーネはうんざりした表情になったが、キールトは如才なく「まあな」と笑ってみせた。
「オルボー、もうこのくらいで勘弁してくれよ。娼館の予約に行くんだろう?」
「あっ、いけね」
立ち去ろうとしたオルボーは、ふと「そうだ」と声を出して足を止め、訓練場に残っている隊員たちをきょろきょろと見回した。
「アイリ、キールト、ちょっと待っててくれよ」
オルボーはそう言い残し、ひょろりと背が高い暗褐色の髪の騎士に小走りで近づいていく。
「よう、ルフ!」
オルボーは、ルフと呼ばれた青年の肩に太い腕を回した。
「今夜は一緒に出掛けようぜえ」
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