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4 冬の出来事
「え……」
唐突な問い掛けにアイリーネがぽかんとすると、ルーディカは「不躾で申し訳ありません……」と、気まずそうに視線を下げた。
「キールト様と私がぎくしゃくしているのはお気づきですよね。……実は、冬にお会いしたときに――」
アイリーネはハッとすると、慌ててあたりを見回した。
今、この家庭的な温かみのある別荘には、アイリーネとルーディカ、管理人のケニース夫妻、そしてキールトがいる。
アイリーネに励まされてフォルザに同行することにしたキールトだったが、到着から三日経っても未だにルーディカに声をかけることができず、この日もアイリーネと一緒に朝の鍛錬と食事を済ませると、そそくさと自分が寝起きしている部屋に引っ込んでしまった。
そのためキールトがこの薬草園の近くにいる可能性は低いが、仕事熱心なケニース夫妻は庭の手入れや清掃のためしょっちゅう屋外に出ているし、ここに隣接する菜園に野菜を採りに来ることもある。
「ル、ルーディカ、急いで草むしりを済ませて、私の部屋に行こう!」
◇ ◇ ◇
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