4 冬の出来事

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 ――今夜は、ずっと一緒にいたい――  前回フォルザに滞在していたとき、キールトはルーディカにそう求めたのだという。  冬の日の夕食後のこと。その翌朝には、アイリーネと共にフォルザを発たねばならなかった。  またしばらく離れて過ごさなくてはならない恋人たちは別れを惜しみ、他に誰もいない厨房の釜戸の前で密かにくちづけを交わした。いつも通りに。  そしてルーディカは、逞しく成長した恋人の背中に腕を回して力いっぱいしがみつき、キールトもそれに応えて華奢な身体をぎゅっと抱いた。――これも、いつも通りに。  そのときだった。キールトがいつも通りではない言葉を発したのは。 『今夜は、ずっと一緒にいたい』  そう囁いたキールトは、防寒のためにルーディカが襟元に巻いていた布をほどき、鎖骨のあたりにも柔らかく唇を落とした。  十三歳の夏に中庭で初めてくちづけをして以来、そうするだけで自分は幸福感でいっぱいになっていたのに、恋人のほうはもっと深い触れ合いを求めていたことを知ったルーディカは愕然とし、思わずキールトを押しのけてしまった。  出会ったとたんに恋に落ちたあの日から、不思議なほど気持ちが寄り添い、楽しいと思うことや美しいと感じるもの、何かを一緒にしたいと思う瞬間まで、まるで響き合うようにぴたりと重なっていたふたりの、初めての大きな食い違いだった。  互いに戸惑いながらも、ふたりは自分の気持ちを相手に解ってもらおうとした。 「私は、結婚してからそうなるものだと思っていたと言い、キールト様は、それまで待つのは辛いと……」
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