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レフティネは、明るい調子で身の上を語り始めた。
「あたしが十五になったばかりのときに、父が愛人と行方をくらましちゃって。働き手がいなくなってどうしようかと思ってたら、北の果てだから行きたがる女の子が少なくて実入りがいいらしいって話を小耳に挟んで、こうなったらひと稼ぎしてやろうってエルトウィンの花街に向かったんです」
大胆な決断にアイリーネたちが目を丸くすると、レフティネは「あたしだって、最初は不安でいっぱいだったんですよ?」と当時の心境を明かす。
「でも、いざ働き出したら、駐屯地があるおかげで治安はいいし、上得意の騎士様たちは陽気で優しくてさっぱりしてるし、すっかり馴染んじゃって。あと数年は野薔薇館でお世話になるつもりだったんですけど、上の弟が仕事で一人前になったから戻って来いって便りをくれたんで、じゃあ帰ろうかなって。でも……」
レフティネは、困ったような笑いを浮かべた。
「故郷の村に着いたとたん、弟の恋人に子供ができたのが分かって、ふたりは隣村で新しく所帯を持つことになって。母は病気がちだし、下の妹や弟はまだ小さいし、またしばらくあたしが実家の稼ぎ頭になるしかないなってことで、さっきフォルザの娼館の面接を受けてきて、明日から働くことになったんです」
再び〝レフティネ〟と名乗ることになったのだと彼女は言う。
「こうなったら、こっちでも看板張れるくらい頑張っちゃおうかと……あっ、良かったら騎士様がたもいらしてくださいね。花街の中心にある〝噴水楼〟ってとこです」
ふっと婀娜めいた目つきになって、レフティネはアイリーネを見た。
「――あたしは女性も大歓迎ですよ?」
「え」
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