7人が本棚に入れています
本棚に追加
ふたりとも一途に想い合っていることは明白なのにと、アイリーネはもどかしく思った。
「じゃあやっぱり、真意を知るためにもきちんと話をした方がいいんじゃないかな。キールトからも伝言を頼まれたよ。『ふたりだけで話がしたい』って」
ルーディカは怯えたように首を横に振る。
「……ますます向き合うのが怖くなりました……」
普段は物事を落ち着いて客観視できるルーディカをこんな風にしてしまうとは、恋とは本当に計り知れない。
アイリーネは困ったように微笑んだ。
「ねえ、騎士団ってね」
唐突に話題を変えたアイリーネに、ルーディカは不思議そうな視線を向ける。
「さっき話したように、娼館通いについての考え方ひとつとってもそうなんだけど、本当にいろんな人たちの集まりなんだよね。意見が合わなくて衝突したり、口をきかなくなったりすることだってしょっちゅうあるし」
ルーディカはますますきょとんとした。
「隊長が――たまに私たちの話に出てくる、あの〝エルトウィンの荒熊〟がね、『それぞれ違ってるからこそ、力を合わせたとき強くなれるんだぞ』って、よく言うんだ。もし思考や行動がそっくりな人間ばかりが揃ってたとしたら、同じような失敗を繰り返したり、欠点を補えなかったりするから、すぐに全滅するんだって」
アイリーネは少し可笑しそうな顔をする。
「確かに、性格や考え方が違う者同士が協力したら、予想以上にうまく事が運んだ、なんてことは意外とあるんだよね」
最初のコメントを投稿しよう!