6 満月の夜に 前

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 ふたりとも一途に想い合っていることは明白なのにと、アイリーネはもどかしく思った。 「じゃあやっぱり、真意を知るためにもきちんと話をした方がいいんじゃないかな。キールトからも伝言を頼まれたよ。『ふたりだけで話がしたい』って」  ルーディカは怯えたように首を横に振る。 「……ますます向き合うのが怖くなりました……」  普段は物事を落ち着いて客観視できるルーディカをこんな風にしてしまうとは、恋とは本当に計り知れない。  アイリーネは困ったように微笑んだ。 「ねえ、騎士団ってね」  唐突に話題を変えたアイリーネに、ルーディカは不思議そうな視線を向ける。 「さっき話したように、娼館通いについての考え方ひとつとってもそうなんだけど、本当にいろんな人たちの集まりなんだよね。意見が合わなくて衝突したり、口をきかなくなったりすることだってしょっちゅうあるし」  ルーディカはますますきょとんとした。 「隊長が――たまに私たちの話に出てくる、あの〝エルトウィンの荒熊〟がね、『それぞれ違ってるからこそ、力を合わせたとき強くなれるんだぞ』って、よく言うんだ。もし思考や行動がそっくりな人間ばかりが揃ってたとしたら、同じような失敗を繰り返したり、欠点を補えなかったりするから、すぐに全滅するんだって」  アイリーネは少し可笑しそうな顔をする。 「確かに、性格や考え方が違う者同士が協力したら、予想以上にうまく事が運んだ、なんてことは意外とあるんだよね」
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