6 満月の夜に 前

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 目をぱちくりさせたままのルーディカに、アイリーネは言った。 「ルーディカはずっとキールトと気が合い過ぎてたから、ちょっと食い違いがあっただけで心配になっちゃうんだろうけど、ほら、ルーディカと私だって、仲はいいけど違うところは沢山あるじゃない?」 「え……ええ」 「趣味や興味の対象も同じじゃないし、しっかり考えてから行動するルーディカに対して、私は考えるよりも先に身体が動いちゃうし。――でも、一緒にいると楽しいよね。全く違う物の見方が新鮮だったり、なるほどって思ったり……」  恋愛関係にもそれが当てはまるのかどうかは知る由もないアイリーネだが、仲直りをして欲しい一心で、あえて確信めいた口調で言った。 「違いがあった方が、きっと面白いよ」  ルーディカは、目が覚めたばかりのような瞬きを繰り返す。 「あのね、休暇で駐屯地を離れるとき、エルトウィンの騎士たちは『コスクド・カールド・トゥラード』って声を掛け合うんだ」  アイリーネが口にした呪文のような言葉に、ルーディカは反応した。 「意味はよく分かりませんが、その響きは……北の地方の古語でしょうか?」 「そう。さすがルーディカ」  アイリーネは嬉しそうな笑みを浮かべる。 「『楽しい休日を!』って感じで使われてるんだけど、元々の意味は『大事な人と喧嘩したまま戻って来るなよ!』なんだって」  一度で耳に残ったのか、ルーディカは口の中で「……コスクド・カールド・トゥラード……」と繰り返した。  それが叶うかどうかは、ルーディカとキールト次第だ。    ◇  ◇  ◇
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